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小ネタ:動物にとって血液はどう見えているのか

生物 視覚

血液は、動物の体内を循環し、代謝や免疫を担う液状の媒質である。血液が大量に失われれば、生命の維持は困難になる。

人間にとっての血液の色

人間にとって、血液は視覚的な強さを持っている。その赤い色によって、血液が体外に出ていればすぐに気が付ける。よって傷や病を見落とさず対処できる。これは痛みと同様に、身体の危険な状況を察知する、重要な仕組みである。もしも血液が透明なら、出血なのかその他の体液なのかの区別も出来ず、いつの間にか失血死しているかも知れない。痛みが、対処すべき身体の危険な状況を伝える直接の信号であるとしたら、血液の色は、視覚を通じて危険な状況を伝える信号である。

痛みと違って、血液の視認による状況の認識は、他の個体にも及ぶ。血まみれの仲間がいれば、その仲間の危険はもちろん、自身の危険の可能性も察知し得る。出血を感知すれば、人間はその原因探して対処する。人間にとって、真っ赤な血液の色がもたらす役割は大きい。では、他の動物にとって血液の色はどう見えているのだろうか。

血液の赤

ヘモグロビン

人間の血液の赤い色は主に、赤血球に含まれるヘモグロビンによる。ヘモグロビンは酸素結合タンパク質であり、肺等で酸素と結合し、細胞等で酸素を切り離すことで、全身に酸素を運搬する。このようなガス交換機能は、ヘモグロビンを構成する、鉄原子を含んだヘム分子によるもので、このヘムが赤い色の元となる。

赤い血液は概ねヘモグロビンに由来するが、その他の分子による場合もある。例えばミオグロビンは、多くの動物では血液よりも筋肉に多い分子だが、ヘモグロビンに似た働きをする。あるいは、赤貝やミミズなどが用いるエリスロクルオリンも、ガス交換を行う。どちらもヘムを含み、それによって赤い色を示す。赤い血液は、ヘムの持つ鉄原子によって酸素と結合し、同時に赤い色もこれに由来している。

赤くない血液

動物の中には、ヘモグロビンを用いないガス交換を行うものもいる。一部例外はあるが、軟体動物や節足動物の場合はヘモシアニンという、銅原子をもった分子を利用する。この場合、銅原子がヘモグロビンの鉄原子の役割を担う。タコやイカ、エビ、カニ、それと貝類の多くが、捌いても真っ赤な血液を見せないのは、この分子を利用したガス交換を行う血液を持つためである。

血液の視認

人間は高度な視覚を持つ。眼球の能力も複雑だが、それ以上に、眼球が得た可視光による像を、脳で処理し、意識を含めたより高次の情報処理を行う部分が優れている。意識という機構は概念と論理の取り扱いを可能とし、例えば血液の存在と出血の因果関係や、それへの対処を連動できる。

その他の動物でどの程度、こういった情報処理が可能かは、まだまだわかっていない。人間の意識に比肩するものを持つのか、人間の意識すらまともに取り扱う術が無い現状では、推し量るのも難しい。しかしそもそも、赤という色を区別できない場合はどうだろうか。一般にウシやウマは、赤の区別が難しいとされるが、血液でもどうようなのだろうか。

あるいは、色覚異常の場合はどうだろう。赤緑色覚異常であれば、血液の赤は濃い緑と判別できない可能性もある。人間であれば、痛覚等他の感覚による危険の察知と、区別出来ないにせよ、その血液の示す色を関連付けられるかもしれない。しかしやはり、赤い血液が持つほどの視認性は無いように思える。

血液の視認という能力は興味深い。

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